婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!
「しばらくって、どれくらい?」
「人の世にすると……半年ほどかと」
 変な言い回しをするな、と思いながら、半年、と反芻する。

「旦那さまには許可をいただいております。あとはお嬢様のお返事をいただきたく」
「お父様が許可しているなら、私にはなにも言うことはないわ」
 本当はさみしいけど。半年で戻って来てくれるというのなら。

「ありがとうございます。必ずや戻って参ります」
 ウィレットは笑顔を見せた。
 極上の笑みだ、と私はうっとりと見ほれた。



 それからの半年は味気ないものだった。
 ごはんもお菓子もおいしくないし、毎日がつまらない。
 思い出すのはウィレットのことばかり。
 私って、こんなに彼のことが好きだったんだ、とため息をつく。

 指折り数えて過ごして、ようやく半年を過ぎたころ。
 それでも彼が戻るという便りはなくて、私は毎日落胆した。

 一カ月もすぎると、もう彼は戻らないのではと不安になった。
 二か月をすぎると、だんだんあきらめが大きくなった。
 三カ月をすぎて、もう彼は戻らないのだと確信した。

 私は涙をこぼした。
 もとより身分違いで、実らない恋だ。
 だけど、さよならも言わずに終わることになるなんて、思いもしなかった。

 白い鳥も彼も、どうして私になにも言わずに去ってしまうのだろう。
 ただ悲しくて仕方がなかった。
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