婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!



 ウィレットが去ってから一年が過ぎた。
 私はその日もぼうっと窓から外を眺めていた。

 いつだったか、鳥が落ちていたのもこんな晴れた日だったなあ、と思い出す。
 白くてきれいな、見たことのない鳥だった。羽の先だけが黄金に輝いている。
 金茶の目をしていて、珍しいな、と思った。

 羽をケガしているようだったので、家に連れて帰って手当をしてあげた。
 重傷ではなかったせいか、数日すると元気にえさを食べるようになり、一週間もしたら飛べるようにもなった。

 外で離してあげたら、お礼をするかのように旋回して、それから飛び去って行った。
 白い鳥はときどき窓辺に来ては、歌うようにさえずり、去っていった。

 ちょうどウィレットが来た頃、鳥は来なくなってしまった。
 こんこん、とドアがノックされた。
 どうぞ、と言うと、父が入って来た。

「お前、まだ支度をしてないのか」
 あきれたような父の声に、私はため息をつく。

「お見合いなんて。どうせ婚約したところでまた破棄になります」
「今回はそうはならないと思うがな」
 父が謎の自信を見せて来る。
 私は首をかしげた。

「とにかく、きちんと準備しなさい」
 父が扉を振り返ると、メイドが入って来た。
 私はあきらめて、着替えることにした。
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