婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!
約束の時間までに着替えて化粧も済ませると、メイドからお客様が到着したと告げられた。
私は二階の自室から応接間へと向かった。
扉の前で、立ち止まる。
憂鬱な気分に支配され、ドアをノックしようとした手が止まる。
が、結局はあきらめてノックをした。
許可されて部屋に入って、驚いた。
そこにはウィレットがいたからだ。
「お久しぶりです、お嬢様」
客が座るべき上座にいた彼は、私を見て立ち上がった。
向かいに座っていた父はにこにこと見守っている。
私はただ呆然と彼を見つめた。
「そんなところに突っ立ってないで、入りなさい」
父に言われて、我に返った。
おずおずと部屋に入ると、廊下にいたメイドが扉をそっと閉めた。
「お父様、どうしてウィレットがここに? お見合いの方はどちらに?」
「ウィレットがそうだよ」
私は目をぱちくりさせた。
ウィレットがお見合いの相手? 平民で、従者の彼が?
「彼は身分を隠して従者になっていたそうだ。我が家にいる間にお前を見初めたそうだ。それで、今回のお見合いとなった」
いろいろと無理がある説明だと思うんだけど。