花の海駅より君に描く、“約束の花”が咲いたとき
 なんて綺麗な紅いランプだろう。――私たちの瞳は、ランプの役割を果たし、どんなに深い夜の森でも真昼のように映る。



 少年の瞳が煌々と燃えている。それは、一体何を意味するのか――それを問う前に、その真実が明かされた。



「悪い。おれは、絵描きをしているアカシアっていう者だ。お前の瞳に咲く花が、あまりにもきれいだったから。モデルになってほしいと思ったんだ」



――アカシア。朱雀羽のような、神々しい朱い髪の煌びやかな少年。錆びたアンティーク調のかばんの中にはスケッチブック、色鉛筆などの画材、それから、押し花の栞がたくさん入っているのが見える。


「私は、ことはな。瞳の花って……?」

「おれも初めてだ。まだ満開じゃないようにも見えた。花咲くその時まで、朝、ここで会わないか?」



 それは突然のお誘いだった。新手のナンパかもしれないと思いながらも、頷いてしまったのはきっと夏風がはらんだ熱に浮かされてしまったせいだ。




――明日、なに話そうとか。

 なに着てこようとか。


 じゃなければ思うはずない、きっと……。


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