花の海駅より君に描く、“約束の花”が咲いたとき
 アカシアと過ごす時間に曇りはなく、いつも晴れ渡っていた。町で見たもの、過ごし方、美味しかったものの話――面白い話、そうでない話も、花火が咲いたように、鮮やかになる。



 いつものように花の海駅で話をしていた時に、あるポスターに目が留まる。


「花祭り懐かしいな」

「ああ。ここの駅が花の海になって、花を使った創作菓子の店もたくさん出るんだよな。毎年人気なのは、薔薇ジャムなんだけど。秒で売り切れるし」

「薔薇ジャムを使ったパイも人気だよね。試食させてもらったけど、いっぱい買っちゃった」


……今年は行けるかな。花買って飾りたいし、香水も見たい。花をふんだんに使った石けんなんかもほしい。睡眠用のラベンダーグッズとか。

 誘いたい人がいるのに、言葉にしようとすると、音の葉にならない。こんなにもカタチにすることが難しいなんて今まで思わなかったな。


 ぐるぐる回る思考回路。諦めも肝心という都合のいいなぐさめ言葉で自分を納得させようとした瞬間、アカシアが屈託なく微笑った。




「いいよ。おれも、ことはなと一緒がいいから」


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