花の海駅より君に描く、“約束の花”が咲いたとき
「ごめん、待たせて! 色々準備してたら遅くなった。母さんにさ、“女の子持たせるんじゃない”って怒られた」

「別に気にしてないよ。いいお母さんだね」


「ああ。口うるさいけど、誰より強くて優しい人だよ。満月きのことカモミールのスープが絶品でね、今度ことはなにも食べてほしいな。母さん手料理振る舞うの好きなんだ」

 家族のことを話すアカシアの表情は野に咲く花のように微笑ましい。駅前を彩る露店の数々――花を釣る《花ヨーヨー》、夏の風物詩《花風鈴》、花雑貨を売る《待宵草》、花と焼き菓子《マドレーヌ》。


 それらを見て回っていると、アカシアが「懐かしいな」と小さくこぼしたと同時に、明るい声がその場に響き渡る。

 
 「あっれー? あっくんじゃん!!」

 
 
 何故かその露店だけ客足がない――夏疾風のようなこの人は、一体誰なのか。


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