しるべ
スコットは今からピクニックに行くかのような
ワクワクした顔で佳乃子に提案した。
「さぁて、もうすぐ着くけど。
みんなお腹すいてるんじゃない?
ご飯を買って帰りませんか?」

佳乃子はその提案に乗って笑顔を見せた。
「そうね。夕御飯を食べ損ねたもの。
私もお腹ぺこぺこ。」


2人は近くのスーパーに入ると
あーでもないこーでもないと
出来合いの夕飯を沢山買った。
ビニール袋2袋にピザを2枚。
パーティーをするかのような
緊張感の無い荷物を見て
「いっぱい買ってしまった」と2人は笑った。

買い物が終わる頃には
リラックスしたいつもの
佳乃子に戻ることが出来た。

たくさんの夕飯を乗せたスコットの車は
ニュータウンかなえについたのは7時を超えていた。

家の駐車場にスコットの車を入れていると
玄関の電気がつき、
佳乃子のつっかけを履いた楓が
玄関から顔を出した。

楓はスコットに軽く挨拶をすると
佳乃子のところに来て柊斗の様子を話した。
「今は中でテレビを見ているよ。
何をしに来たかは教えてくれないけど
危害を加えたりする子じゃないと思う」

幼い頃から変わらない心配すると
眉間に皺を寄せる楓の癖が出ている。
佳乃子はそれを見つけて微笑むと
楓の背中をパンパンと叩いて
「大丈夫よ」と笑顔を返した。

「そうだ。これも持って行ってくれる?」
楓は佳乃子から買い物袋を二つ受け取ると
「何人で食べるつもり?」
と驚いている。

佳乃子はすかさず
「ピザも買ったの」
とピザを見せて
いたずらっこのように
スコットと笑っていた。
いつもと変わらない
ほんわりとした母の様子に
楓の緊張は解れていった。
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