しるべ
2人がキッチンに消えると
スコットと楓のホッとした顔が
玄関に並んだ。

「俺が小さい時の母を見てるようです。
心配してたんですけど…。
母はきっと大丈夫そうですね」
「そうだね。大丈夫だよ。」
スコット達も買い物袋を持って
リビングに入っていった。


リビングでは柊斗が布巾で角まで丁寧に
ダイニングテーブルを拭いている。
家でも手伝いをしているのだろう。

「並べてくれる?」
佳乃子が声をかけると
柊斗は「はいっ」と返事をして
ピザと取り皿、箸等を手際よく並べた。

「お手伝いが上手だね」
柊斗の手際の良さにスコットは感心している。
柊斗はお手伝いの範疇を超えた「家事をする人」の様だ。

楓はその様子を見て柊斗に声をかけた。
「家でもやってるんだ」
「お父さんが1人で頑張ってるから」
柊斗は質問に答えながら
取り皿や箸の位置を的確に置いていく。
「偉いなー」

ーー父が1人で?
楓は柊斗達に家庭環境が
思っていた家庭像と違うのかもと、
この話を続けなかった。

ダイニングテーブルの上が完璧に並べられた頃、
キッチンから佳乃子がサラダを持ってやってきた。
「さぁ、お腹すいたから食べましょう」
佳乃子の声に合わせて4人は夕食を食べ始めた。
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