しるべ
佳乃子は自分の横に柊斗を座らせて
遠慮がちな柊斗の代わりに
柊斗の皿に食材を入れていった。
寿司、巻き寿司、唐揚げ、海老フライ、サラダ…
次々と自分のお皿に食材が乗るのを
柊斗は驚いた顔で眺めている。

佳乃子はそれに追撃する様に質問していく
「お昼ご飯は食べたの?」
「えっと、おにぎり食べました。」
「おやつは?」
「今日は食べれません」

柊斗の皿にどんどんと盛って
それでも佳乃子は心配そうに言った。
「おにぎりだけじゃお腹すいてるわよねぇ。
夕食これだけで足りるかしら」

これでもかとまだ盛ろうとする佳乃子に
気付いて楓が慌てて制す。
「足りるよ。むしろ食べきれないって。」


「そう?男の子は食べるんだから〜
柊斗くん、遠慮しないでね。」
佳乃子のほんわりした返しに柊斗もつられて笑う。

柊斗の笑顔を見て佳乃子も笑う。
浩介の電話があった時には柊斗と
和やかな時間を過ごすと思っていなかった。
他の大人達も柊斗との夕食を楽しんだ。

スコットは柊斗にオーストラリアの話をした。。
「私はオーストラリア人からきました。」
「コアラがいる国?」
「そう。よく知ってるね。」
「家にあるコアラのぬいぐるみに
オーストラリアの国旗がついてて、
この前、オーストラリアを調べたんです。」
「自分で調べたんだ。勉強家だ。」

楓は柊斗ぐらいの頃体験した隣町まで
冒険した話をした。
「僕も冒険してみたい」
と言うので、楓は
「今日で懲りたと思ったけど」
と、嗜めると柊斗は「そうだった」と笑っている。

そんな風に柊斗は子供らしい顔で
考えたり笑ったりして
リラックスして食事を取れた。

気を使って柊斗に話しかけるというより
柊斗に興味を持って話しかける
そんな夕食の風景だった。

佳乃子も笑っている。
このまま浩介が来るまで
穏やかな時間が流れると
柊斗以外は思っていた。


柊斗は決めていた
佳乃子に言わなきゃいけない
そう思って今日やってきた

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