しるべ
食事が終わると、佳乃子はキッチンで
洗い物と片付けをしている。
スコットも皿を運んで一緒に洗い物を始めた。

「柊斗くん、いい子だね」
「そうね。浩介が育てた子供らしくて。
礼儀もお手伝いもよくできてる。
いい子。何も心配することなかった。」

佳乃子は、スコットの方を向いて
「今日はスコットに助けられた。
心強かった。
一緒にいてくれてありがとう。」
そう心から礼を言った。



柊斗は佳乃子とスコットの2人がキッチンで
仲良く片づける様子をじっと見ていた。
席を立つと楓の側にやってきた。
お茶を飲む楓が「どうした?」と聞くと
柊斗は内緒話のように
楓の耳に両手を当てて小さな声で聞いた。
「スコットさんは佳乃子さんの彼氏ですか?」

「…うーん。2人は長い友達だよ。
仲がいいだけだよ。」

楓は柊斗に質問に驚きながら答えた。
ーー随分、切り込んだことを聞くなぁ

「そっか」
そう言うと、柊斗は楓の側から離れた。
そのまま柊斗はリビングの端に置いてある
リュックの前に座り込んだ。

楓は柊斗の様子が再び気になっていた。
それに何か違和感を感じた。
答えを聞いて柊斗の顔が
一瞬がっかりしたように見えたのだ。
楓は柊斗に声をかけようかと思っていた時、
柊斗が立ち上がり動き出した。

「佳乃子さん…」
柊斗に呼ばれて佳乃子がキッチンから顔を出す。
「うん?どうしたの?」
キッチンでニコニコと柊斗の方を見た。
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