しるべ
楓が柊斗をベットまで連れて行った
リビングが一層静かに感じる。


佳乃子はソファーに座り
この1時間で起こった事を頭で整理していた。

ーー柊斗くんの言うことが正しければ
少なくとも浩介は自分の子供では無いと
知っていながら柊斗くんを育てていた。
出生の事実を柊斗くんが知っていることを
浩介は知らないのだろう。
なぜ、柊斗くんは謝ろうと思ったのだろう。
浩介は柊斗くんの母親を許した
と言う事なんだろうか。
浩介はいつの時点でそれを知ったのだろうか。
私には関係のない話だけれど、
自分の子供でない子を育てる事は
浩介に覚悟がなければできない。


佳乃子の頭には数々の疑問達が渦巻いていたが
浩介達の問題は客観的に
距離を置かなければいけないと
心に決めていた。
ーー深入りしてはいけない。
浩介の家庭の問題だから。


キッチンから食器を片付ける音が止むと
スコットが姿を現した。

「私、お勧めのホットミルクにしました。」
佳乃子の前にホットミルクを置くと、
スコットも向かいに座った。
「ありがとう」
「隠し味はラム酒だよ」

スコットの入れたホットミルクを
佳乃子は静かに飲んだ。
ホットミルクとスコットの気遣いが
衝撃と驚きで固まった身体を
ゆっくり解かしていった。

「落ち着いた？頑張ったね。」
スコットが話すと
佳乃子は落ち着いた顔で感謝を伝えた。
「ありがとう。今日は大変な一日だわ」

この後、浩介が来る。
まだまだ夜が続く。
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