しるべ
藤煤竹
なんとか私は生きている。
あの後どうやって帰ったにかは覚えていない。

あの日から10日ほどして楓が遊びにきた。
なんとかいつものようにしていたつもりだが「体調悪いの?」としきりに心配してきた。

それから4日もしないうちに梓が家に来た。
忙しいのに。
楓から聞いたのだろう「何があったの」なんて大人みたいに心配してくれて、いつの間にか頼もしくみえる大人になったのね。なんてはぐらかした。

2人ともすずに何か話しながら帰って行った。

子どもたちになんて話したらいいんだろう。
「お父さんが離婚したいって」
「お父さんが不倫したって」
「子どもができたんだって」
成人していても腹違いの弟か妹ができると聞いてなんと思うだろう。


頭を抱える。
このまま泥のように溶けてしまえば何もなかったようにできる?
何度も寝ても何度起きてもあの日の事実は変わらない。
嘘だったら、夢だったらと思っても変わらない。


浩介には連絡していない。
したくないと言うのが本音。
そう言えば、ずっと前から連絡していなかった。

子どもが小さい頃、浩介が出張の時はよく電話をして話をしていた。
確か単身赴任が始まった頃もたくさん電話していた。

いつから…浩介は不倫していたのか。
私は浩介をほったらかしだった?
< 13 / 116 >

この作品をシェア

pagetop