しるべ
浩介が来る日、佳乃子は車で天野駅に来た。
ロータリーにある時計は11:00を過ぎていた。
到着時間を聞いてはないけど、いつもの時間に迎えに来た。

佳乃子はお茶を買いに出たところで、浩介に会った。

「迎えに来なくても良かったのに」
「コーヒーで良かったよね?」
浩介の返事も聞かずに自販機のブラックのコーヒーのボタンを押した。
浩介にコーヒーを渡すと
「話し合いを今日で終わらせたいから迎えに来たの」
佳乃子は力強い目で浩介を見た。

「そうだな。俺が運転するわ」
浩介が運転席に、佳乃子が助手席に座った。

浩介がテキパキと座席、バックミラーの調整をすると
エンジンをかけた。
「ドライブに行こう」
佳乃子は返事をせず、窓から見える風景を眺めていた。
浩介が何を考えているのかわからず、走る車に身を委ねていた。

白い軽自動車は見覚えのある山道を走っていた。

ーー子どもたちとよくドライブに行った道だけど
浩介はそんなこと覚えてないわよね
そういえば梓はちょくちょく外でご飯したり
家に遊びにくるが
楓は最近顔を見ていないな。
連絡してみようかしら。

そんな風に楓のことを気にかけていると

「楓は家に来てるか?」
と浩介が話しかけてきて佳乃子は心を見透かされたのかとドキリとした。

「そういえば、最近は会ってないわ。
梓とはこの前ご飯食べた。」
「そうか、梓は元気?」
「連絡してないの?」
「してない」

「この前…楓がきた」
そう言ったきり浩介は黙って運転している。
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