しるべ
真紅
佳乃子はお墓の見学後、
晴香と山城の事務所に来ていた。
晴香の了承を得て山城の事務所で浩介に電話をしていた。
離婚は結婚の何倍ものエネルギを使うというがその通りで、
浩介に連絡すると毎回精神的にも肉体的にもしんどい。
自宅で電話をすると気持ちの逃げ場がなくなる気がして違う場所で連絡したかったのだ。
お墓探しの勢いも借り、事務的に電話を終わらせようとしたのだ。
深呼吸をしても身体は強張る。
それでも「よし」っと勢いをつけ浩介に電話をかけた。
佳乃子は目を瞑りながら浩介を呼び出す「プルルル」という電子音を聞いていた。
「初めまして」
女の声だ。
心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。
その穴からどくどくと痛みの変わりに苦しみが身体中に広がった。
電話口の女はゆっくりと話した。
ーーあの赤い車の女だ。
浩介の不倫相手だ。
息が止まりそうな感覚を覚えた。
体全身の血があっという間に冷たく重く感じる。
浮気相手と対峙する心持ちなど一つも用意していなかった。
思ってもないことで、佳乃子は声を失っていたが
電話口の女はこちらの様子を気にせず話し始めた。
「坂倉浩介くんの奥様ですよね?」
ーー浩介…くん…
佳乃子は喉元に何か込み上げそうになりタオルで口を塞いだ。
お茶を用意していた晴香が佳乃子の様子に気付いて、その手を止めた。
「こんなことになってしまい。
一度お会いして、謝らせてもらいたいと思ってました。」
女の声はカラカラと音が出そうなぐらい軽快に話している。
言葉に心が乗っていないことがわかるほどに女の口ぶりは軽い。
ーーそういう割に自分の名前ひとつと名乗らない。
女の恐ろしく身勝手な口ぶりに
不安を押し出して黒い怒りが佳乃子の身体に流れ込んでいた。
晴香と山城の事務所に来ていた。
晴香の了承を得て山城の事務所で浩介に電話をしていた。
離婚は結婚の何倍ものエネルギを使うというがその通りで、
浩介に連絡すると毎回精神的にも肉体的にもしんどい。
自宅で電話をすると気持ちの逃げ場がなくなる気がして違う場所で連絡したかったのだ。
お墓探しの勢いも借り、事務的に電話を終わらせようとしたのだ。
深呼吸をしても身体は強張る。
それでも「よし」っと勢いをつけ浩介に電話をかけた。
佳乃子は目を瞑りながら浩介を呼び出す「プルルル」という電子音を聞いていた。
「初めまして」
女の声だ。
心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。
その穴からどくどくと痛みの変わりに苦しみが身体中に広がった。
電話口の女はゆっくりと話した。
ーーあの赤い車の女だ。
浩介の不倫相手だ。
息が止まりそうな感覚を覚えた。
体全身の血があっという間に冷たく重く感じる。
浮気相手と対峙する心持ちなど一つも用意していなかった。
思ってもないことで、佳乃子は声を失っていたが
電話口の女はこちらの様子を気にせず話し始めた。
「坂倉浩介くんの奥様ですよね?」
ーー浩介…くん…
佳乃子は喉元に何か込み上げそうになりタオルで口を塞いだ。
お茶を用意していた晴香が佳乃子の様子に気付いて、その手を止めた。
「こんなことになってしまい。
一度お会いして、謝らせてもらいたいと思ってました。」
女の声はカラカラと音が出そうなぐらい軽快に話している。
言葉に心が乗っていないことがわかるほどに女の口ぶりは軽い。
ーーそういう割に自分の名前ひとつと名乗らない。
女の恐ろしく身勝手な口ぶりに
不安を押し出して黒い怒りが佳乃子の身体に流れ込んでいた。