しるべ
夜、隣の都を呼んで4人で夕飯を囲んだ。
「いつも母がお世話になってますから、そのお礼も兼ねて」と楓が誘い出した。
都さんは梓と楓の招待に大喜びで、
「都のおばちゃんも呼んでくれてありがとうね。
おじさんは外食みたいだからすごく嬉しい。」
都さんは終始ニコニコして食事を楽しんでいる。
楓と梓が作ったタコライスと楓が買ってきたデパ地下サラダもテーブルに並べておしゃべりを楽しみながら都さんをもてなした。

食事が終わると、楓は家に帰った。
キッチンで佳乃子と都が仲良く食器を洗っている。
暫くすると梓はオンライン英会話の時間が迫り2人に後片付けを任せ自分の部屋に駆け込んでいった。

「あー美味しかった。
佳乃子ちゃんも結構食べれるようになってきたね」
「困るぐらいよ。食欲も戻ってきちゃって色々食べれる。」
「食べれるのが一番」

泡が付いた手で親指をビシッと立てて都さんは笑う。
夕食の招待も喜んでいたが、
佳乃子が気力を取り戻し始めて喜んでいた。


夏の終わり頃、あの日辺りが暗くなった頃
楓と梓に連れられて帰宅した佳乃子は
力無く2人に引き摺られ
帰宅する姿を見て都は驚いた。
2人から何があったのか聞いた時には
更に衝撃と怒りを覚えた。

お墓の見学を一緒に行けばと後悔していた。
楓と梓の2人にお願いして日中は坂倉家で
昼食やすずのお世話がてら遊びに行った。

あの日の佳乃子を思えば、今の佳乃子は見違えるほど元気で笑顔も見せてくれた。
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