しるべ
ーー確かに。お父さんらしい
梓はそう思うとやっと前を向いて
父の顔を見ることができた。

「私も許せない。
でも二人が決めたことに
とやかく言わないよ。
だから健康だけは気をつけて」
梓は真正面にいる父の目を見て話した。

「許さ無くていい。ありがとう…すまない」
浩介は赤い目で応えた。


梓は机の上に白い箱を出した。

「はい。これ、弟に」

「え」

「男の子でしょ。
会いには行かないけど…
新しい命は別の話。弟だから」

驚く父に小さな白い箱を渡した。
中には白いベビー靴下が入っている。

「ありがとう」
父の目が細くなり、
さっきまで我慢していた涙が大粒となって溢れた。

梓もいつの間にかポロポロと泣き始めていた。
浩介は慌ててポケットから
赤と青のチェックのハンカチを梓に渡した。

梓は腹違いの弟がこの顔をさせるのかと思うと本心は寂しいかった。
でもそこにいつもの父を見つけ安心したところもあった。


ハンカチで涙を拭きながら
久しぶりに大好きな父の懐かしい匂いを感じていた。
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