しるべ
山吹色
佳乃子は駅前の喫茶店「木の家」で
サンドイッチセットを頼んでカウンターで女将さんとマスターとで話をしていた。

今頃家では浩介と子ども達が話をしている。
3人の話が終わるまで「木の家」にいることにした。

楓と梓の二人はこの離婚について
佳乃子とは話したがらなかった。
佳乃子が話し始めると話題を無理矢理変えたり
用事をつけてその場から離れたり…。
佳乃子もそれ以上無理には話をしなかった。
二人が佳乃子の体調を心配してのことだと
わかっていたから。

だからこそ、浩介と子ども達が
話し合える時間を大事にして欲しかった。
それに浩介と鉢合わせして、流石に平常心ではいられない。
だから佳乃子は安全な「木の家」で過ごしている。

佳乃子の目の前にサンドイッチセットが届いた。
パンに挟まれた卵から湯気が立ち上っている。
心も温まりそうなほど口に美味しさが溢れた。

「卵サンド美味しいでしょー」
女将さんが一番人気だと教えてくれたのだった。
「今日は珍しいね。都ちゃんは?」
「千鶴さんは今日はお孫さんの発表会なんです。」
女将さんに言われる程、都さんと佳乃子はよく二人で出掛けている。
二人で出掛けた後はこの「木の家」でお茶をして帰っている。

「はい、いらっしゃいませ」
女将はドアのカウベルの音と共にいつもに笑顔で接客に向かった。

佳乃子は卵サンドをまた一口頬張って、今日の自分を労っていた。
ーー美味しい。もっと食べれそう。

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