しるべ
「いらっしゃいませ」
カランコロンと聞こえの良いカウベルの音と
ドアから入る冷たい冷気に佳乃子の声が交じった。
お客さんを席に誘導するとお客さんから聞いた注文を慣れたようにマスターに伝えた。


離婚してから3ヶ月、佳乃子は木の家でパートを始めた。

黒いパンツに白いブラウスをしゃんと着て
店に似合うグレーのエプロンを着てテキパキと動いている。
短めに切った髪は手入れが行き届いき、佳乃子を若く見せた。
見違えるほどイキイキとしている。

女将に働き口を探していると話したら
是非ともここで働いて欲しいとスカウトされた。
タイラーの観光記事に喫茶「木の家」の紹介記事も載ったおかげか最近外国人のお客さんがよく来店するようになった。
木の家は立地的に観光地から離れているのでほとんど外国人が来店することはなかったのだが
今ではお客さんの2割ほどが外国人になった。
英語を話せる佳乃子は女将の欲しい人材そのもので
マスターの承諾も聞かず女将の鶴の一声で佳乃子の採用が決まった。

佳乃子の接客のおかげで外国人のお客さんを持て余す事がなくなり、
外国人の客数も増え、またマスターのコーヒーが好評で外国人の常連も増えた。
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