しるべ
客数が増えるとトラブルも起きやすくなる。
佳乃子がいれば何とかおさまったが
いない時間帯は地元の常連と
外国人の常連が諌めるという
双方の常連客の連携でやんわりと
トラブルを収めるチームワークが存在した。
寡黙なマスターとお喋りだけど英語は話せない女将が創り上げる穏やかで居心地の良いこの喫茶「木の家」を守りたいと言う気持ちが双方の常連を結託させたのだった。


タイラーもサンドイッチを気に入って今ではすっかり木の家の常連になった。

「美味しい。木の家のサンドイッチ最高」
タイラーは拳を上げて喜んでいる。
「木の家名物パンケーキもいい!」
負けじと千鶴が推しのパンケーキで対抗する。
2人ともニコニコしながら味わっている。

佳乃子との縁で千鶴とも仲良くなり、今では3人でテーブルを囲んでおしゃべりに興じている。
大咲山の展望台の風景が良かったと佳乃子が賞賛すると
千鶴がみんなで行こうと決まり、木の家のサンドイッチをテイクオフしピクニック気分を味わった。
流石に12月の展望台は寒かったがホットコーヒーが格別に美味しく感じた。

久しぶりの仕事に生きがいと元気を貰い
友だちとの穏やかなそれでいて楽しい時間に心の余裕を貰った。
佳乃子は前を向いて元気を取り戻していた。
もう誰も佳乃子を見て心配する人はいなかった。
それほど佳乃子は楽しみ始めていた。
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