しるべ
女将の天気予報は当たり
雨がポツポツと降り出した頃
千鶴が木の家にやってきた。

「そう言えば、梓ちゃんはそろそろオーストラリアに行くんだっけ?」
千鶴は夕飯前だというのに、パンケーキを頬張りながら佳乃子に尋ねた。千鶴には好物のパンケーキは夕飯とは別腹なんだそうだ。

「来月にはオーストラリアに行くよ。」
「いろいろ手続きをしなくちゃいけないんでしょ?」
「大変だったみたいだけど、楽しくやってるみたいよ」
梓は有言実行でオーストラリアでの就職を手に入れた。タイラーも陰ながら梓の力になってくれ知り合いの病院を紹介してくれた。

「寂しくなちゃうわね。
佳乃子ちゃんもあっちで仕事出来そうよね」
「寂しくなったら私もそうしようかしら。」
「じゃぁじゃぁ。私も行こうかしら!英語勉強しなきゃ」
千鶴はパンケーキを味わいながら「あれもしたいこれも見たい」とオーストラリアの観光名所をあげ出した。
「今度旅行会社でパンフレット見に行く?」と話は移り
終いには「一緒にオーストラリア旅行もいいよね」と佳乃子の記事仕事はやっぱりそっちのけで 、2人の夢が広がってまた話を楽しんでいる。

そろそろ帰ろうという時にスマホに山城から
「不在着信5件」の表示が見えた。
木の家の仕事中はサイレントにしていてそのままだった。
これが梓や楓だったら「スマホの意味ない」と怒られるとこなのだが
今回は嫌な予感がした。
久しぶりに山城からの連絡だった上に
こんな何度も山城は電話してこない
大抵はLIMEで用件を終わらせてくる。
だから、いい予感はしなかった。

空はもう暗く雷も鳴り始めていた。
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