しるべ
5月だと言うのに眩しい太陽の日差しが
夕方になってやっと穏やかに感じる
ホームに吹いてくる風が汗ばんだ身体に
ひんやりと気持ちいい。

「おばあちゃん、ここまでの見送りで大丈夫?」
4人いる孫の中で一番おばあちゃん子の絢香が
心配そうに千鶴に聞いた。

千鶴は北関東にある長男一家の家に
連休中泊まりに来ていた。
昨日の絢香のダンス発表会を見て帰るところだ。
高校生の絢香は小学生に頃から始めた
ダンスの発表会に毎年招待してくれ
随分と成長した絢香は長男夫婦に代わりに
駅のホームまで見送ってくれる。
絢香は大人しい性格だが、
ダンスとなると腰まである黒髪を揺らし
キレのあるカッコいい姿を見せてくれる。

「もう大丈夫。
お友達にお土産もたくさん買えたから。
それにこれからまだお出かけに行くの」
「えー。今から?おばあちゃん大丈夫?!」
絢香は連日、買い物やレジャーと祖母を
連れ回して遊びに行っていたので心配している。

「絢香とお出かけは楽しいから疲れないのよ。
温泉入ったらもっと元気になるわ」
絢香の顔から心配の色が消え、笑っている。
「また来年も発表会来てね」

小さい頃から変わらな笑顔の絢香を見て
千鶴も同じく笑顔で答えた。
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