しるべ
絢香と男の子は地下のコンコースに降りると
目的の6番ホームに向かって歩いている。
「すみません。せっかくのお見送りの時間なのに…」
絢香は男の子から発せられた大人びた言葉に
驚いて男の子のまだまだ幼い顔を見た。
チグハグなギャップが面白い。
「大丈夫。すごい大人っぽいこと言うのね。
小学6年生?」
「四年生です。」
思った以上に幼くて絢香は少し驚いた。
「へー。今日は1人なの?」
「…はい」
絢香の質問に男の子は顔を
曇らせ不安そうな顔を見せた。
「どこまで行くの?」
男の子は絢香の顔をチラッと見て俯きながら答えた。まるで嘘を話す幼児のような仕草だった。
「…えっと。おじぃちゃんの家に。」
それから男の子は絢香の顔を見ることがなく
絢香は随分と気になった。
話題を変えて話しかけてみるが、
男の子は俯いて答える。
絢香は聞かれちゃ嫌なことだったかなと
話しかけるのをやめた。
そうしているうちに、6番ホームへ上がるエスカレーターの前にたどり着いた。
男の子は立ち止まって、絢香の方を見た。
「ここで大丈夫です。
ありがとうございました。」
男の子が勢いよく頭を深々下げたので、
絢香もつられて頭を下げた。
絢香はつられたのが恥ずかしくて、
苦笑しながら男の子に答えた。
「あ、じゃ。気をつけてね」
男の子はエスカレーターの黄色いマスの中に
ちょこんと入るとそのまま登って行った。
水筒とリュックを抱えた後ろ姿は小学生に見えた。
水筒についた名札がカタリとこちらを向いた。
そこには「坂倉柊斗」とマジックで書かれていた。
目的の6番ホームに向かって歩いている。
「すみません。せっかくのお見送りの時間なのに…」
絢香は男の子から発せられた大人びた言葉に
驚いて男の子のまだまだ幼い顔を見た。
チグハグなギャップが面白い。
「大丈夫。すごい大人っぽいこと言うのね。
小学6年生?」
「四年生です。」
思った以上に幼くて絢香は少し驚いた。
「へー。今日は1人なの?」
「…はい」
絢香の質問に男の子は顔を
曇らせ不安そうな顔を見せた。
「どこまで行くの?」
男の子は絢香の顔をチラッと見て俯きながら答えた。まるで嘘を話す幼児のような仕草だった。
「…えっと。おじぃちゃんの家に。」
それから男の子は絢香の顔を見ることがなく
絢香は随分と気になった。
話題を変えて話しかけてみるが、
男の子は俯いて答える。
絢香は聞かれちゃ嫌なことだったかなと
話しかけるのをやめた。
そうしているうちに、6番ホームへ上がるエスカレーターの前にたどり着いた。
男の子は立ち止まって、絢香の方を見た。
「ここで大丈夫です。
ありがとうございました。」
男の子が勢いよく頭を深々下げたので、
絢香もつられて頭を下げた。
絢香はつられたのが恥ずかしくて、
苦笑しながら男の子に答えた。
「あ、じゃ。気をつけてね」
男の子はエスカレーターの黄色いマスの中に
ちょこんと入るとそのまま登って行った。
水筒とリュックを抱えた後ろ姿は小学生に見えた。
水筒についた名札がカタリとこちらを向いた。
そこには「坂倉柊斗」とマジックで書かれていた。