しるべ
柊斗の位置情報は、
県外を示していた。

酷い驚きと共にため息なのかわからない
とてつもなく大きな息を吐き出した。
取り敢えず居場所はわかった。
しかし安堵とは違う脱力感を感じた。

ーー母子揃って似たようなことを。

位置情報の履歴を線で辿ると、
14時には最寄りの駅で
在来線を辿りそこから新幹線の乗り換え
何県もの都道府県を通過している。


ーーどこに行こうとしているんだ?
そういえばここ最近、
柊斗がこそこそとタブレットで何かしていたな。


そう思い出して、次第柊斗の部屋中を探した。
タブレットはベットの掛け布団を
捲るとすぐ見つかった。
浩介が決めたパスコードを打つと、
一番最後に見ていたと思われる画面が映し出された。


マップアプリで自宅から
ある駅までのルートを検索している。
そこには14:00出発19:30に到着と告示されていた。


ーー何故ここに?何をしようとしているんだ?


浩介は再び驚き、柊斗の意思が判らず頭を抱えた。
ぐるぐると7年前の夏海の襲撃光景が思い出される。


柊斗には柊斗の母親と結婚する前に結婚していた人、成人の兄と姉がいることは話していた。
だがどこに住んでいるかなどは話していない。
なのにマップアプリの目的地は
「天野駅」になっている。


浩介は混乱しながらスマホを手に取り電話を掛けた。

この10年一度もかけたことのない
何度も声が聞きたいと思ったその人の電話番号へ


静寂の中何コール目かに
懐かしい人の声が聞こえた。


「はい。もしもし?…浩介?」

安堵を覚えたせいか
相手の言葉を畳み掛けるように言葉が出た。


「柊斗が!柊斗が!1人で
1人でそっちに向かっているかもしれない!」
< 96 / 117 >

この作品をシェア

pagetop