少し愛重めな橘くんは溺愛症候群
先輩には俺だけでいいから
お昼休み・屋上
日和「ぐすっ、ごめんね。もう授業始まっちゃった……」
渡したティッシュで涙を吹いて、鼻水をすすっている日和先輩の頭を撫で続ける。
日和先輩の過去は予想以上に辛かった。
誰にも打ち明けたくないような重い過去を、まだ日も浅い俺に話してくれた。
それがどうしようも無く嬉しくて、俺は最低だと認識した。
日和「私、お母さんにもお父さんにも捨てられたからピアノを習えなくなった。従兄弟の親の人達に迷惑はかけたくなくて、私はピアノをやめた」
涙が収まった日和先輩は意思の強い目で地面を見つめている。
ピアノが大好きで、親の人達のことも大好きだったのに、何も続けられなくなって日和先輩は辛かっただろう。
たまらず抱きしめて耳元で囁いた。
蓮「日和先輩の悩みなんていくらでも聞きます。なのでこれからは我慢なんてしないでください」
日和「蓮くん、ありがとう……」
蓮「あと、今日は授業サボっちゃいましょう。これは俺たちだけの秘密ですからね」
しーっと人差し指を立てて日和先輩に微笑んだ。
泣き腫らした目はまだまだ赤くて戻らなそうだし、今更戻っても心配されるだけだろう。
日和「ふふっ、そうだね!!サボっちゃおう」
まつ毛についた涙と、日和先輩の笑顔が日に照らされてきらりと瞬いた。
♡
放課後・音楽室
俺のいつも練習してる曲を弾きながら日和先輩とお喋りをする。
なにか吹っ切れたような日和先輩の笑顔は、いつもより輝いて見えてしまう。
日和「私も、昔習ってた曲弾きたいな」
日和先輩の昔習っていた曲。
思い出すのは辛い、とさっきまで言っていたのに何故か今は引こうとしている。
ピアノの椅子に座って鍵盤に両手を乗せた。
静かに息を吐いて、勢いよく鍵盤を押した。
滑らかな音に低い低音が重なって流れていく曲。
ピアノを弾く日和先輩は生き生きとしていて、自然と笑顔になっている。
2分くらいたってピアノを弾く手を止めた。
日和「ここからはまだ習えてなかったから知らないんだ!!」
いつもと変わらない笑顔、明るい声、元気な動き。
そんなふうに戻ってよかった。
そう思うと安堵が込み上げて、無意識に日和先輩に手を伸ばしていた。
椅子に座っている日和先輩がその気配に気がついて振り向いた時、俺は両手で日和先輩の頬を挟んだ。
日和「蓮……くん?」
もう、ダメだ。
何でだろう。
日和先輩が俺に話してくれたのが嬉しかったからか。
日和先輩が俺と付き合ってくれているのが嬉しいからか。
その音色が好きだからか。
なんで今こんな気持ちになったのかは分からない。
だけど、俺は今言いたいって思った。
混乱する日和先輩の瞳を見つめて、口を開く。
蓮「日和先輩、好きです」
日和「……え?」
蓮「俺は明るくて元気で、たまに儚いような日和先輩が好きでたまらない」
日和「私も蓮くんのことは大好きだよ?」
理解が追いついていない日和先輩がどうしようもなく可愛い。
少し赤い頬も固まっている体も、誰にも絶対見せたくない。
蓮「俺は恋愛的な意味で出会った時から好きでした。だから、俺と本気で付き合って欲しい」
俺の強い意志を持った瞳と、俺の言葉でやっと理解したのか一気に真っ赤になった。
日和「えっ……?えぇっ!?本当に……?」
蓮「生徒手帳を拾ってもらった時、俺は日和先輩に一目惚れしました。ずっと好きだった。今返事がなくてもいいから……」
日和「ちょっと待って!!」
俺が日和先輩を語っていると、日和先輩は俺の口を両手で塞ぐ。
真っ赤で顔から湯気が出そうになっているのが可愛すぎる。
今にも抱きしめたいって思う。
蓮「日和先ぱ……」
日和「あのねっ!私の気持ちは恋か分かんないの。だけど蓮くんと会えたら嬉しいし、手を繋げたら安心する。お昼休みに話を聞いてもらったのが蓮くんで良かったって思ってる……!!これって恋かな?」
俺の告白を真剣に考えてくれるだけでも嬉しいのに、俺に恋をしているかもしれないと思ってくれているのも嬉しい。
日和「もしもこれが恋なんだったら、私は蓮くんと付き合いたいですっ……!」
恥ずかしそうに俯きながらしっかりと、そう返事してくれた。
俺は日和先輩の気持ちが恋かどうかは分からない。
でも俺のことを真剣に考えて、会えたら嬉しいと言ってくれるのは恋だと信じたい。
蓮「俺と本気で付き合ってくれますか」
日和「……うん!!これから本当によろしくお願いします!!」
蓮「じゃあ日和先輩は俺以外の男を見ないでくださいね?」
まだ手探りな恋だけど、本気のお付き合いを始めた。
♡
一週間後・休み時間・廊下
蓮「日和先輩……!」
お昼休みの時間になると、俺はすぐに日和先輩のクラスへ直行して迎えに行く。
今日も同じように行ったけど、日和先輩が男と話しているところに直面してしまった。
日和「あっ、蓮くん!!」
弁当を持って駆け寄ってきてくれた。
日和先輩の持つ弁当は2つ。
俺と日和先輩、2人分。
蓮「じゃあ行きましょうか」
日和「うん!」
付き合い初めて一週間、俺たちは話し合って付き合っていることを周りに知らせてもいいんじゃないか、という考えに至った。
だから今もこうして恋人繋ぎをして廊下を歩けている。
女の子「きゃあ!!蓮様が手繋いでる!!」
女の子「私の蓮くんが……!!」
きゃあきゃあ言って、俺たちの周りを付きまとう女たちを避ける。
蓮「邪魔。日和先輩の迷惑になるからどいて」
少しだけ強く言ったら女は避けていくから、普通に歩くことが出来る。
絡んだ手から日和先輩の温かさが伝わってくる。
ぎゅうっと握って屋上まで歩いた。
今は屋上で食べることが当たり前になって、2人でひとつの毛布にくるまって身を寄せる。
こうしてくっついていられるのは幸せ極まりない。
だけどさっきの事が気になってむしゃくしゃする。
蓮「さっき男と話してましたよね?」
日和「ご、ごめんね!!授業のノート渡してただけなのっ……!!」
今でも日和先輩は俺の愛の重さを受け止めてくれる。
それどころか俺のわがままを聞いて謝ってきたり。
優しくて綺麗で完璧な日和先輩。
日和「だから……嫌いにならないで?」
いつもの上目遣いなのに、少し唇にリップを塗っているからかより綺麗に見える。
その姿に耐えきれず、俺は日和先輩に顔を近づける。
日和「っ……」
唇が重なって目を閉じた。
日和先輩とのキスはこれが初めて。
長い間キスをして顔を遠ざけると、日和先輩は息を吐いた。
日和「ぷはあっ……」
どうやら息を止めて居たらしい。
蓮「ふ、日和先輩可愛いです。もう俺から離れないでください」
屋上の小屋の中。
憧れてた先輩と俺は二度目のキスを交わした。
それは幸せで温かい温もりを感じる、愛おしいものだった。
日和「ぐすっ、ごめんね。もう授業始まっちゃった……」
渡したティッシュで涙を吹いて、鼻水をすすっている日和先輩の頭を撫で続ける。
日和先輩の過去は予想以上に辛かった。
誰にも打ち明けたくないような重い過去を、まだ日も浅い俺に話してくれた。
それがどうしようも無く嬉しくて、俺は最低だと認識した。
日和「私、お母さんにもお父さんにも捨てられたからピアノを習えなくなった。従兄弟の親の人達に迷惑はかけたくなくて、私はピアノをやめた」
涙が収まった日和先輩は意思の強い目で地面を見つめている。
ピアノが大好きで、親の人達のことも大好きだったのに、何も続けられなくなって日和先輩は辛かっただろう。
たまらず抱きしめて耳元で囁いた。
蓮「日和先輩の悩みなんていくらでも聞きます。なのでこれからは我慢なんてしないでください」
日和「蓮くん、ありがとう……」
蓮「あと、今日は授業サボっちゃいましょう。これは俺たちだけの秘密ですからね」
しーっと人差し指を立てて日和先輩に微笑んだ。
泣き腫らした目はまだまだ赤くて戻らなそうだし、今更戻っても心配されるだけだろう。
日和「ふふっ、そうだね!!サボっちゃおう」
まつ毛についた涙と、日和先輩の笑顔が日に照らされてきらりと瞬いた。
♡
放課後・音楽室
俺のいつも練習してる曲を弾きながら日和先輩とお喋りをする。
なにか吹っ切れたような日和先輩の笑顔は、いつもより輝いて見えてしまう。
日和「私も、昔習ってた曲弾きたいな」
日和先輩の昔習っていた曲。
思い出すのは辛い、とさっきまで言っていたのに何故か今は引こうとしている。
ピアノの椅子に座って鍵盤に両手を乗せた。
静かに息を吐いて、勢いよく鍵盤を押した。
滑らかな音に低い低音が重なって流れていく曲。
ピアノを弾く日和先輩は生き生きとしていて、自然と笑顔になっている。
2分くらいたってピアノを弾く手を止めた。
日和「ここからはまだ習えてなかったから知らないんだ!!」
いつもと変わらない笑顔、明るい声、元気な動き。
そんなふうに戻ってよかった。
そう思うと安堵が込み上げて、無意識に日和先輩に手を伸ばしていた。
椅子に座っている日和先輩がその気配に気がついて振り向いた時、俺は両手で日和先輩の頬を挟んだ。
日和「蓮……くん?」
もう、ダメだ。
何でだろう。
日和先輩が俺に話してくれたのが嬉しかったからか。
日和先輩が俺と付き合ってくれているのが嬉しいからか。
その音色が好きだからか。
なんで今こんな気持ちになったのかは分からない。
だけど、俺は今言いたいって思った。
混乱する日和先輩の瞳を見つめて、口を開く。
蓮「日和先輩、好きです」
日和「……え?」
蓮「俺は明るくて元気で、たまに儚いような日和先輩が好きでたまらない」
日和「私も蓮くんのことは大好きだよ?」
理解が追いついていない日和先輩がどうしようもなく可愛い。
少し赤い頬も固まっている体も、誰にも絶対見せたくない。
蓮「俺は恋愛的な意味で出会った時から好きでした。だから、俺と本気で付き合って欲しい」
俺の強い意志を持った瞳と、俺の言葉でやっと理解したのか一気に真っ赤になった。
日和「えっ……?えぇっ!?本当に……?」
蓮「生徒手帳を拾ってもらった時、俺は日和先輩に一目惚れしました。ずっと好きだった。今返事がなくてもいいから……」
日和「ちょっと待って!!」
俺が日和先輩を語っていると、日和先輩は俺の口を両手で塞ぐ。
真っ赤で顔から湯気が出そうになっているのが可愛すぎる。
今にも抱きしめたいって思う。
蓮「日和先ぱ……」
日和「あのねっ!私の気持ちは恋か分かんないの。だけど蓮くんと会えたら嬉しいし、手を繋げたら安心する。お昼休みに話を聞いてもらったのが蓮くんで良かったって思ってる……!!これって恋かな?」
俺の告白を真剣に考えてくれるだけでも嬉しいのに、俺に恋をしているかもしれないと思ってくれているのも嬉しい。
日和「もしもこれが恋なんだったら、私は蓮くんと付き合いたいですっ……!」
恥ずかしそうに俯きながらしっかりと、そう返事してくれた。
俺は日和先輩の気持ちが恋かどうかは分からない。
でも俺のことを真剣に考えて、会えたら嬉しいと言ってくれるのは恋だと信じたい。
蓮「俺と本気で付き合ってくれますか」
日和「……うん!!これから本当によろしくお願いします!!」
蓮「じゃあ日和先輩は俺以外の男を見ないでくださいね?」
まだ手探りな恋だけど、本気のお付き合いを始めた。
♡
一週間後・休み時間・廊下
蓮「日和先輩……!」
お昼休みの時間になると、俺はすぐに日和先輩のクラスへ直行して迎えに行く。
今日も同じように行ったけど、日和先輩が男と話しているところに直面してしまった。
日和「あっ、蓮くん!!」
弁当を持って駆け寄ってきてくれた。
日和先輩の持つ弁当は2つ。
俺と日和先輩、2人分。
蓮「じゃあ行きましょうか」
日和「うん!」
付き合い初めて一週間、俺たちは話し合って付き合っていることを周りに知らせてもいいんじゃないか、という考えに至った。
だから今もこうして恋人繋ぎをして廊下を歩けている。
女の子「きゃあ!!蓮様が手繋いでる!!」
女の子「私の蓮くんが……!!」
きゃあきゃあ言って、俺たちの周りを付きまとう女たちを避ける。
蓮「邪魔。日和先輩の迷惑になるからどいて」
少しだけ強く言ったら女は避けていくから、普通に歩くことが出来る。
絡んだ手から日和先輩の温かさが伝わってくる。
ぎゅうっと握って屋上まで歩いた。
今は屋上で食べることが当たり前になって、2人でひとつの毛布にくるまって身を寄せる。
こうしてくっついていられるのは幸せ極まりない。
だけどさっきの事が気になってむしゃくしゃする。
蓮「さっき男と話してましたよね?」
日和「ご、ごめんね!!授業のノート渡してただけなのっ……!!」
今でも日和先輩は俺の愛の重さを受け止めてくれる。
それどころか俺のわがままを聞いて謝ってきたり。
優しくて綺麗で完璧な日和先輩。
日和「だから……嫌いにならないで?」
いつもの上目遣いなのに、少し唇にリップを塗っているからかより綺麗に見える。
その姿に耐えきれず、俺は日和先輩に顔を近づける。
日和「っ……」
唇が重なって目を閉じた。
日和先輩とのキスはこれが初めて。
長い間キスをして顔を遠ざけると、日和先輩は息を吐いた。
日和「ぷはあっ……」
どうやら息を止めて居たらしい。
蓮「ふ、日和先輩可愛いです。もう俺から離れないでください」
屋上の小屋の中。
憧れてた先輩と俺は二度目のキスを交わした。
それは幸せで温かい温もりを感じる、愛おしいものだった。