ファースト・デート
03
土曜日の朝。雲一つない真っ青な空が広がっていた。
待ち合わせ場所の駅前には、十分前に着いたけど、福原くんがすでに来ていた。
「ごめんね、福原くん。待った?」
「僕もさっき来たところです」
福原くんは、水色のシャツに黒いデニムという格好だった。今日の天気みたいに爽やかだ。
「福原くん……あたしの格好、変じゃない?」
「いえ、その……すごく、可愛いです!」
「もう。お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないですよ。本当です」
電車に乗り、横並びに座った。福原くんはスマホで遊園地のウェブサイトを表示させた。あたしはそれを覗き込んだ。
「花崎さんはやっぱりパレード見たいですか?」
「うん、見たい見たい!」
「昼の一時からなんですけど、いい場所を取ろうと思うと十二時には行っておいた方がいいみたいです。早めの十一時頃にお昼ご飯食べましょう」
「わっ、調べてきてくれたんだ? ありがとう!」
「僕から誘ったんです。当然ですよ」
そして、人生初の遊園地のゲートは……カラフルで、賑やかで、夢みたいだった。
本を読んでも夢の中には行けるけど。
それとはまた違う。実際に、この身体で、体験することができるのだ。
「ねぇ、福原くん! まずはジェットコースターね!」
「ついていきますよ」
そこからはもう、物語の主人公になった気分。
ジェットコースターで、身体がふわりと浮いて、思いっきり叫んで。
急流すべりで水の中にざぶーん。
空中ブランコで空を飛んで。
たちまちお昼になった。
「ねえ、福原くん、ご飯どうする?」
「実は予約してるんですよ」
福原くんに連れて行ってもらったのは、高級そうなレストランだった。
「えっ、こんなところ、本当にいいの?」
「僕が勝手に予約したんですから、おごりますよ。それくらい、カッコつけさせてください」
あたしの方が年上なのになぁ。
まあ……いっか。
レストランには行列ができていたけど、予約してくれていたおかげで、すぐに席に通してもらえた。
「花崎さん、何でも好きなの選んでくださいね」
「じゃあ……オムライスかなぁ」
「僕もそれにします」
そういえば、福原くんと食事をするのはこれが初めてだ。
丁寧にオムライスを崩す様子は、とても上品だった。
あたしはくれぐれも、ケチャップを顔や服につけるなんてカッコ悪いことをしないよう、慎重に食べた。
食べ終わってから、パレードが見れる場所に移動した。
「花崎さん、いい暇つぶしがありますよ。ネットで、面白いファンタジー小説見つけて。一時間くらいで読めると思うんです」
「へぇ、そうなの?」
「送りますね」
夢の中で、さらに夢を見るような気分だった。
人間の少年がエルフと恋に落ち、いずれ少年の方が先に死ぬとわかっていても、エルフはずっと少年のことを想い続けるという話だった。
「……花崎さん、泣いてます?」
「あっ、ちょっとうるってきちゃった……」
「花崎さんって感受性豊かですよね」
「恥ずかしいとこ見られちゃったな、もう」
涙をぬぐったところで、軽快な音楽が流れ始めた。
パレードの始まりだ。
待ち合わせ場所の駅前には、十分前に着いたけど、福原くんがすでに来ていた。
「ごめんね、福原くん。待った?」
「僕もさっき来たところです」
福原くんは、水色のシャツに黒いデニムという格好だった。今日の天気みたいに爽やかだ。
「福原くん……あたしの格好、変じゃない?」
「いえ、その……すごく、可愛いです!」
「もう。お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないですよ。本当です」
電車に乗り、横並びに座った。福原くんはスマホで遊園地のウェブサイトを表示させた。あたしはそれを覗き込んだ。
「花崎さんはやっぱりパレード見たいですか?」
「うん、見たい見たい!」
「昼の一時からなんですけど、いい場所を取ろうと思うと十二時には行っておいた方がいいみたいです。早めの十一時頃にお昼ご飯食べましょう」
「わっ、調べてきてくれたんだ? ありがとう!」
「僕から誘ったんです。当然ですよ」
そして、人生初の遊園地のゲートは……カラフルで、賑やかで、夢みたいだった。
本を読んでも夢の中には行けるけど。
それとはまた違う。実際に、この身体で、体験することができるのだ。
「ねぇ、福原くん! まずはジェットコースターね!」
「ついていきますよ」
そこからはもう、物語の主人公になった気分。
ジェットコースターで、身体がふわりと浮いて、思いっきり叫んで。
急流すべりで水の中にざぶーん。
空中ブランコで空を飛んで。
たちまちお昼になった。
「ねえ、福原くん、ご飯どうする?」
「実は予約してるんですよ」
福原くんに連れて行ってもらったのは、高級そうなレストランだった。
「えっ、こんなところ、本当にいいの?」
「僕が勝手に予約したんですから、おごりますよ。それくらい、カッコつけさせてください」
あたしの方が年上なのになぁ。
まあ……いっか。
レストランには行列ができていたけど、予約してくれていたおかげで、すぐに席に通してもらえた。
「花崎さん、何でも好きなの選んでくださいね」
「じゃあ……オムライスかなぁ」
「僕もそれにします」
そういえば、福原くんと食事をするのはこれが初めてだ。
丁寧にオムライスを崩す様子は、とても上品だった。
あたしはくれぐれも、ケチャップを顔や服につけるなんてカッコ悪いことをしないよう、慎重に食べた。
食べ終わってから、パレードが見れる場所に移動した。
「花崎さん、いい暇つぶしがありますよ。ネットで、面白いファンタジー小説見つけて。一時間くらいで読めると思うんです」
「へぇ、そうなの?」
「送りますね」
夢の中で、さらに夢を見るような気分だった。
人間の少年がエルフと恋に落ち、いずれ少年の方が先に死ぬとわかっていても、エルフはずっと少年のことを想い続けるという話だった。
「……花崎さん、泣いてます?」
「あっ、ちょっとうるってきちゃった……」
「花崎さんって感受性豊かですよね」
「恥ずかしいとこ見られちゃったな、もう」
涙をぬぐったところで、軽快な音楽が流れ始めた。
パレードの始まりだ。