ファースト・デート
04
キャラクターが乗った車が、ゆっくりと近付いてきて、その周りを派手なダンサーが踊っている。
ダンサーの一人がシャボン玉を吹いていて、それがふわふわとあたしのところにも漂ってきた。
「わあっ……!」
あたしは思わず声をあげた。
さっきまで、切ない物語の中に入り込んでいたのに、一気に心が塗り替えられてしまった。
音楽、ダンス、笑顔……こんなにも、明るくてきらびやかなものがあったんだ。
後から考えると、写真でも撮っておけばよかったかな、なんて思うけど。
その時のあたしは、夢中で目の前の光景を見つめていた。
「ねえ、福原くん! すごかったね!
すごかったね!」
「はい! 場所取りした甲斐がありました」
それからは、ペースを落として、コーヒーカップやメリーゴーランドに乗った。
最後にあたしが選んだのは、観覧車だ。
ゴンドラに向かい合わせに乗り、あたしはわくわくしながら言った。
「高いところ好きなんだ! どんな景色が見れるかな?」
福原くんは、ぎゅっと握りこぶしを作って、引きつった笑顔を浮かべていた。
あっ、まさか。
「福原くん……高いところ苦手?」
「バレましたか」
「ご、ごめんね? あたしったら、付き合わせて……」
「いいんですよ。それより……二人っきりですね」
「あっ……」
ゴンドラはゆっくりと動いていく。
あたしの心も動いていく。
どんどんのぼる。高いところへと。
「福原くん。隣……行ってあげようか?」
「えっ……」
「こわいんでしょ? 隣の方がいいよ」
「はい……」
あたしはそっと福原くんの左隣に腰掛けた。
自分でも、大胆なことをしていると思う。
けど、勝手に口と身体が動いてしまった。
この気持ちは、きっと。多分。いや、絶対。
「……花崎さん、おかげでこわくないです」
「そっか」
「でも、外は見れないですね……」
「そうだ。頂上で写真撮ろう?」
「はい」
観覧車の支柱を見つめて、頂上が近付いた時。
あたしはスマホを構えた。
「いくよー」
カシャッ。
「僕、上手く笑えてないですね」
「あたしも変な顔だ」
ゴンドラが下りていく。
でも、あたしの鼓動は高鳴ったまま。
記念ができてしまった。男の子。福原くんとの。初デートの記念が。
ゴンドラを出て、地上に足をつけた後も、あたしはどこかふわふわしていた。
ダンサーの一人がシャボン玉を吹いていて、それがふわふわとあたしのところにも漂ってきた。
「わあっ……!」
あたしは思わず声をあげた。
さっきまで、切ない物語の中に入り込んでいたのに、一気に心が塗り替えられてしまった。
音楽、ダンス、笑顔……こんなにも、明るくてきらびやかなものがあったんだ。
後から考えると、写真でも撮っておけばよかったかな、なんて思うけど。
その時のあたしは、夢中で目の前の光景を見つめていた。
「ねえ、福原くん! すごかったね!
すごかったね!」
「はい! 場所取りした甲斐がありました」
それからは、ペースを落として、コーヒーカップやメリーゴーランドに乗った。
最後にあたしが選んだのは、観覧車だ。
ゴンドラに向かい合わせに乗り、あたしはわくわくしながら言った。
「高いところ好きなんだ! どんな景色が見れるかな?」
福原くんは、ぎゅっと握りこぶしを作って、引きつった笑顔を浮かべていた。
あっ、まさか。
「福原くん……高いところ苦手?」
「バレましたか」
「ご、ごめんね? あたしったら、付き合わせて……」
「いいんですよ。それより……二人っきりですね」
「あっ……」
ゴンドラはゆっくりと動いていく。
あたしの心も動いていく。
どんどんのぼる。高いところへと。
「福原くん。隣……行ってあげようか?」
「えっ……」
「こわいんでしょ? 隣の方がいいよ」
「はい……」
あたしはそっと福原くんの左隣に腰掛けた。
自分でも、大胆なことをしていると思う。
けど、勝手に口と身体が動いてしまった。
この気持ちは、きっと。多分。いや、絶対。
「……花崎さん、おかげでこわくないです」
「そっか」
「でも、外は見れないですね……」
「そうだ。頂上で写真撮ろう?」
「はい」
観覧車の支柱を見つめて、頂上が近付いた時。
あたしはスマホを構えた。
「いくよー」
カシャッ。
「僕、上手く笑えてないですね」
「あたしも変な顔だ」
ゴンドラが下りていく。
でも、あたしの鼓動は高鳴ったまま。
記念ができてしまった。男の子。福原くんとの。初デートの記念が。
ゴンドラを出て、地上に足をつけた後も、あたしはどこかふわふわしていた。