寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?

 莉里子は少しホッとした。
 この結婚は、“白い結婚(偽装婚)” なのだ。
 相手は高貴な方だし、ご無体な真似はなさるまい。そう思ってチラと王子のほうを見る。

 王子には申し訳ないが、やはり彼を受け入れることはできそうもない。たしかに彼は、王子様だろう。だが、どう見ても老人だ、それもかなり高齢の。

 中身は、育ちの良さからくるのだろう、話していて全然不快ではない。むしろ好感が持てるほどだ。

 しかし、暗い隠し部屋で二人きりで暮らして、“真の愛” なんて芽生えるだろうか?
 それも無理な話だ。

「ねえ、王子様」
「はい、聖女様、何でしょう?」
「何故、王子様はこんな暗い隠し部屋にいらっしゃるの? しかも目隠しまでして」
「それは」

 彼によると、急激に老いが進み、他人から怖がられるのが辛くて隠れ住むようになったらしい。
 また、目隠し布は、光を遮る目的ということだ。

「太陽の強い光や部屋の灯りも眩しくて」
「あーわかった! 王子様は多分、白内障という病気なのよ。お年寄りは皆、そうなるみたいです」

 莉里子の説明に、王子は感激したように言った。
「さすが、聖女様は物知りですね!」
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