寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?
莉里子は物知りではないが、中世の人からしたら、現代人は皆、魔法使いだろう。
莉里子の持っている知識程度でも、王子様に尊敬の目で見られた気がして、少し気持ちいい。
二人は同時に口を開いた。
「王子様なんて堅苦しい呼び方を」
「聖女様なんて申し訳ないので」
目が合った二人は吹き出した。
すると、暗闇の中で「ゴホン」と咳払いが聞こえる。
「あっ、レオナール。まだいたのか」
「お邪魔したようで、申し訳ございません」
レオ様は、王子にぶっきらぼうに返事した。
「レオ様、お願いがあります」
「聖女様、なんなりと」
レオ様は必殺の笑顔を浮かべ、莉里子のほうに向き直った。
「申し訳ないのですが、私はここには住めません」
「えっ?」
「こんな暗い部屋では息が詰まりそう。それに、王子様も本当はこんなところにいたくないはずです。ね?王子様」
「ランスとお呼びください、聖女様」
「聖女様でなくてリリーです、ランス」
微笑み合う二人の様子に、レオ様が、心なしか不機嫌そうな視線を向けてくる。