寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?

 その後、三人は隠し部屋から外に出た。
 目隠し布を巻いている王子と手を繋ぎ、莉里子はゆっくり歩いた。祖父と思えば、手を繋ぐのも自然にできた。手を繋ぐというよりも手を引いて、といった感じだが。

「ランス、思い切って外に出て良かったでしょ?」
「ああ! 空気が違う。澄んだ冷たい空気が心地よい」
 ニューアークは冬の国。一年の大半が冬では、食べ物はどうしているのだろう。

「きっと野菜不足は深刻よね」
「魔王の呪いが一刻も早く解けてほしいと、我々は切実に願っています」

 莉里子の疑問に対し、レオ様からありきたりな返事が返ってきた。
 莉里子は、思い切って言ってやる。

「さっさと魔王退治に行けばいいのに」
「魔王の強大な力の前には、我々の力なぞ通用しません」

「でもほら。よくあるでしょう? 勇者がパーティ組んで魔王退治に行くの。大体は成功してるみたいよ」
「勇者のパーティ?」
 莉里子は、ファンタジー世界のお約束を説明した。

「そもそも、何故魔王は、この国に呪いをかけたのかしら?」
「それは、ランス様を娘婿に寄越せ、と魔王が言い出したのが始まりです」
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