寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?

「リリー様の笑顔は周りを明るくさせる……なんと好ましい!」
「えっ?」
「あ、いや! そういう意味でなく」
「いいのだ、レオナール。リリーの笑顔と笑い声には惹きつけられる。余も同じだ」

 こんなふうに男性の賞賛を浴びたのは初めてかもしれない。莉里子は恥ずかしさで身を捩る。
 人生で最大のモテ期キター!
 at 異世界だけれど。

(しかし、本当にここは異世界? 私はこのまま、ずっとここで暮らすの?)

 我に帰って王子のほうを見ると、彼は嬉しそうに、前歯のない口を大きく開けて笑っている。

(おじいちゃん)
 莉里子は亡くなった祖父を思い出した。
 祖父が亡くなったのは二年前だ。

 母は長年、祖父の介護をしていた。莉里子もできるだけ手伝っていたが、祖父を見送った後、母は莉里子に都会で暮らすのを勧めてきた。

「若い時に、都会で一人暮らしするのもいいんじゃない? 何事も経験だよ。飽きたら、帰ってくればいいし」

 もしかしたら、母のほうが都会で暮らしてみたかったのかもしれない。

 都会でなく異世界で暮らすことになろうとは。
 何事も経験とはいえ、ハードすぎる気もするが。
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