寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?

 カチャカチャ食器の音がする。
 テーブルでは、たくさんの人が食事の支度をしてくれていた。
 テーブルの上に、次々と並べられるご馳走に、莉里子は驚愕した。

「ニューアークは冬の国ですよね? 何故こんなに沢山のご馳走が!」
「知らぬ」
 王子は、あっさり返事する。
 下世話なことは知らないのが、貴人というものなのであろう。

 突然、レオ様が莉里子にぴたりとくっついてきた。彼は身を屈め、唇を彼女の耳元に寄せてくる。
 莉里子の体は、ぞくっと震える。
「内緒の話です、誰が聞いているかわかりませんので」

 そう前置きしてレオ様が語ったのは、農作物が収穫できない季節は、セレスティアが毎日、国民の分まで大量に仕入れてくるという話。

「セレスティアさんが?」
「得意の魔法を使って」
「魔法って、そんな万能なの!?」
「もちろん、無から有を生み出せるわけはありませんから、ある所から強奪……いや、分けてもらうのです」
「ある所?」
「魔王の領地です」

 莉里子の耳元から、レオ様の唇が離れた。
 彼は不敵な笑みを浮かべている。

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