寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?
莉里子は、今ハマっているキャラの自販機を探すのに夢中になった。
そんな莉里子の耳に、
「あー! またハズレだ」
男性の悔しがる声が聞こえてきた。
若い男性が、自販機の前にしゃがみ込んでいる。
「井原さん?」
「え?…… 天宮さん!?」
カプセルトイの丸いケースをいくつも足元に転がせたまま、莉里子を見上げて驚いているのは、井原拓海だった。
井原も驚いているが、莉里子はもっと驚いていた。
井原拓海は、現在の派遣先である大手商社総務課の若手社員であり、女性社員から絶大な人気を誇るエリート社員である。笑顔がどことなく人気俳優を思わせることから、“レオ様” と呼ばれている。
そんな人と、こんな場所で会うなんて。
「こ、こんばんは」
莉里子は緊張して、短く挨拶した。
「こんばんは」
立ち上がった拓海は、例の笑顔を浮かべて言った。
「ガチャ、お好きなんですか?」
「あ、うん。天宮さんも?」
「ええ、大好きなんです」
「僕も見ての通り、大好きなんだけど、これ高いよね。無駄遣いとわかってるのにやめられねー」