寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?
自分が今、立っているのは真っ白な雪原。人っ子一人いない、広大な荒野。
「ウォーン」という犬の遠吠えが聞こえてくる以外、何の物音もしない。
「えーと」
痛む頭に手を当て、また目を閉じて、しばし考える。
(さっき、大きな地震があった。その時に天変地異が起きて、一瞬にして世界が変わったとか?)
いやいや。
一瞬でここまで変わるなんて、そんなわけはない。でも。
再び目を開け、同じ光景を目にして絶句した莉里子だったが、「寒っ!」と叫んだ。
当たり前だ、雪原にいるのだから。
莉里子が身につけているのは、通勤着である半袖の白ポロシャツに、グレーのジョガーパンツである。
「やばい、このままじゃ凍え死んじゃう! おーい、誰かいませんか? 誰か助けて!」
叫びつつ、歩き始めて気づいたが、雪はそれほど積もっていない。莉里子のフラットシューズでも、意外と歩きやすい。
「不思議だわ。何が起きてるの……? そういやレオ様は?」
立ち止まり辺りを見回すが、やはり自分以外、誰もいないようだ。