寄り道で異世界来ちゃったけど、騎士様に愛されてますか?

 犬の遠吠えが、少し近くなってきた気がする。
「ワンコがいるのよね。ということは、人里も近くにあるはずよ、きっと」

 少し安心して歩いていると、遠くに何匹かの犬がいるのが見えてきた。
 そちらに近づきかけた莉里子は、
「止まれ! 動くな、そこでじっとしてろ!」
 という男性の叫び声に立ち止まる。

 ヒュンという音が耳元でして、「キャン」「ギャン」という犬の悲鳴が響いた。
 犬たちは大きく飛び跳ね、次々と地面に転がっていく。

 目の前で何が起きているかわからず、莉里子は声も出せず震えているしかなかった。
「大丈夫か!」
 振り向いた莉里子のすぐ後ろに、毛皮のマントを身にまとった長身の男性が立っていた。

 彼は、大きなアーチェリーの道具みたいなものを携えている。
 猟師だろうか?
 どうやら、遠くにいる犬たちは、彼の矢で(たお)れたようだ。

 しかし、犬を矢で射るとは、なんという野蛮人!
 抗議しようとしたが、莉里子は再びめまいがして、立っているのがようやくという状況だった。
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