おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
キスをやめ、大人しくお水を飲んだ時。咲人さんが唐突に質問した。
「ミミ、今日のご飯で一番おいしかったのは?」
「もちろん、咲人さん特製のナポリタンです!私が三食作るつもりだったのに……ありがとうございます。夜ご飯、ご馳走様でした。部屋に持って行ったら、飛鷹さんも喜んでました!」
「ミミが朝と昼を作ってくれたから、恩返しだよ。俺こそ、ミミのオムライス美味しかった。また……」
「……」
しばらくの沈黙の後、咲人さんは伏し目がちに口を開く。
「そろそろ寝ようか」
「……はい」
当たり前だけど、期待する言葉はもらえなかった。咲人さんは律儀な所があるから、実現し得ない将来の約束はしない。
(でも嘘でもいいから〝また食べたい〟って聞きたかったな。ちょっとだけ心残り)
だけど最後まで残酷で優しいのは、なんとも咲人さんらしい。私にぬか喜びさせず、冷静に現実を突きつけてくれる。
一本の芯にそってブレない人。裏を返せば、信頼できる人。咲人さんは、カッコイイ大人の人だ。