おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

……今更だけど、高層マンションに住んでる咲人さん、お金持ちだ。まさに大人の人って感じ。


「そして私と合わない、別次元の人……」


そびえたつマンションを見上げる。確か咲人さんの部屋は、あの辺り。もう踏み入ることの出来ない部屋は、どうやっても私の手の届かない所にある。


「……〜ッ」


見上げた途端に涙が出そうで、すぐ視線を下げた。涙が出るのも、痛みを覚えるのも……きっと鋭い直射日光のせいに違いない。


(……ん?)


下を向いて歩いていると、後ろの人の靴が目に入る。かなり近い距離にいるのか、今にもつま先が当たりそうだ。


(狭い歩道じゃないんだけどな……。でも遅く歩いてる私が悪いし、ちょっとペース速めよう)

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