おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「しかし存分に時間があるわけでもねぇ。悪いけど、ここから先は移動しながら話すぜ。歩けるかよ、ミミちゃん?」
「……」
「……えぇー……」
不動の私を見て、明らかに肩を落とす飛鷹さん。
この非常事態を前に、足手まといになっている自覚はある。だけど、どうにもこうにも足が動かないのだから仕方ない。
まさか映画やドラマのワンシーンを、この目で見るとは思わず……
私は盛大に、腰を抜かした。
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飛鷹さんの背中に背負われ、数分が経った。私の体重なんて感じてないほど軽やかな足取りで、飛鷹さんは走っている。
説明しながら走るなんて……。
よほど時間が惜しいらしい。
でも、一体なにを急いでるかまでは話してくれない。むしろ〝私が狙われた事について〟話の焦点があたる。
「アンタを襲ったのは、リズ組だ。男が言ってたカシラってのは、リズ組のボス・紫吹(しぶき)って男」
「リズ……?」
「裏社会の派閥の名前だ。聞いたことねーかよ?テレビで度々ニュースになってるぜ」
「!」
そこまで言われて、咲人さんと一緒に見たテレビのことを思い出す。