おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
驚愕の事実に眩暈がした。いま歩いていたら、きっと動けなくなっていたと思う。それくらい恐怖で、震えが止まらない。
(飛鷹さんには悪いけど、今おんぶしてもらっていて本当に良かった……)
私の震えを背中で感じ取ったのか。飛鷹さんは、わざとらしいほど明るい声で喋り始める。
「つーか、もう攫われる心配もねーよ。
だって紫吹はアイツが……じゃなくて。
既に警察が動いてんだ。アンタが紫吹に掴まる前に、紫吹が警察に捕まるさ」
(今……何かを言いかけてやめたよね?)
だけど飛鷹さんは「スピードあげるぞー」と。私の疑問を跳ね飛ばす勢いで、ますます風を切って走る。
その様子から感じるのは、焦り。
表情からは察せないけど、いつもより大きな動きをする飛鷹さんが新鮮で、違和感を覚える。そう言えば、さっき「時間がない」とも言っていた。
思い切って「どこに向かっているんですか」と聞こうとした。だけど偶然か、はたまた計算か。食い気味で飛鷹さんが口を開く。