おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
すると飛鷹さんが「昔話をするぜ」と。
よくあるセリフを口にした。
きっと咲人さんの過去に違いない――なぜか、そう確信できた。一言一句を逃さまいと、全神経を耳に集中させる。
すると、力んだ私を背中で感じたらしい。
飛鷹さんは「これは前置きなんだけど」と、どことなく弱々しい笑みを浮かべた。
「アンタの勘の良さは嫌いだけどさ……今だけは、とんでもねーくらい有難ぇって思ってる。まさしく蜘蛛の糸だ。縋りつきたくてたまんねぇ」
「……どういう事ですか?」
「どういう事かも、どうしたらいいかも、わからねぇんだよな。大切な人だからこそ願いを聞いてやりてぇし、同じくらい、願いを聞いてやりたくない」
「……?」
意味ありげな飛鷹さんの言葉を聞いて、さっき痛感した「自分の癖」を思い出す。
いつも私は、目の前のことしか見えていないこと。
今までこそ運よく大事にならなかったけど、もしかしたらソレは致命的な欠点じゃないのか。今にも取り返しのつかない事態に繋がるのじゃないのか――ふと考え、嫌な汗が背中を伝う。