おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
武器を持たせても、持たせなくても日本一強い、と噂の紫吹を消す。しかも最小限の人数で。
それは、つまり――
この命を諦めろ、ということ。
「……」
雪光さんの目を見れば分かる。
いや、見なくとも雰囲気で分かる。
刺し違えてでも紫吹を消せ、と――
「……家に帰ったら、荷物の整理だな」
おっかない人だと思っていたが、まさか――紫吹を消すためなら自分の右腕を失うことさえ厭わない、なんて。
「……」
所属している組のボスだから。言われたことは絶対だし、歯向かおうとも思わない。
それに雪光さんは、俺の命の恩人だ。
借金まみれの両親は蒸発した挙句、俺を置いていなくなった。学校では煙たがられ、味方のいない荒れ果てた世界でただ一人、理由もなく漂っていた。
一人ヤケを起こしていた時。雪光さんが俺を見つけ、拾ってくれた。この命は、雪光さんに助けられたんだ。あのままだと俺は、遅かれ早かれ死んでいただろうから。
「今こそ恩返し……ってやつか」