おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「紫吹さんの命令だ。車で移動中、あの女が歩いてるのを一目見て〝連れてこい〟とおっしゃった」

「少女にまで手を出すのか。見境ないな」

「っるせーな、もういいだろ!」

「よくねぇよ。
俺とここで会ったこと、紫吹には内緒にしろ。ビトラの連中に邪魔された、とだけ伝えるんだ」

「は、はあ?」


紫吹という男はヘビのようにねちっこく、しつこい男だ。

狙った獲物は必ずしとめるため、紫吹にだけは狙われないよう、目立たず行動する輩も多い。目をつけられたら最後、必ず命がなくなるから。

それは女性においてもそうだろう。
狙った女性は必ず攫う。
何度失敗しようが、必ず手中に収める。

ということは……

少女を野に放った瞬間、紫吹に攫われる。


(だったら、保護するしかない)


でも俺に邪魔されたと紫吹が知れば、ビトラ組の本部に乗り込み、血眼で少女を探すだろう。紫吹は、そういう男だ。

だが今は、むしろこっちが乗り込んで紫吹の首を取ろうとしている時だ。先に紫吹に動かれては困る。阻止するためには、この男らに黙っていてもらうしかない。

< 233 / 350 >

この作品をシェア

pagetop