おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


(と言っても、勘づいた紫吹がコイツらを脅して事実を知るのも、時間の問題だが)


しかし俺が紫吹を消す算段をたてる間だけでも、奴に大人しくいてもらう必要がある。となれば、やはり――この男らに「口外しないよう」圧をかけるしかない。

圧と言っても、男が従順になるのは所詮、金。懐から折りたたんだ札束を取り出し、男らの前でちらつかせる。


「今日お前たちは俺と会っていない。そうだな?」

「あ、会ってない……」
「約束する、言わねぇ!」


交渉成立。
男らを無傷で返し、少女の所に戻る。

会社員らしくスーツを着ているとは言え、男らと内談していた俺なんて怪しいだろうに。少女は、俺が戻ってくるのを律儀に待っていた。


「で?どこから来た迷い猫かな?」

「あ、えっと……っ」


夜が近い夕暮れに、少女の白い肌が際立つ。手を見ると、まだ震えていた。

これ以上に怖がられると面倒だから、親しみやすいよう笑みを浮かべる。すると、白い肌に浮き出た「赤」。大きな瞳は宝石を埋め込まれたように、途端にキラキラ光り始める。

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