おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「そういえば私、一人暮らしなんですよ」

「ふぅん」

「だから、ほら。私を本当に家で飼えたりするんですが……どうですか?」

(……は?)


長い茶色の髪は、少女のしおらしさを表わしている……かと思いきや。とんでもない爆弾発言をかましてきた。こんな見ず知らずの男の家に来たいなんて、どんな神経の持ち主だ。

だけど少女が「俺の顔を見て態度が一変」したことを思い出し、納得した。


(清楚そうに見えて所詮、女は女ってことか)


昔から女に言い寄られることが多かった。
だから女の機微の変化には聡い方だ。

つまり少女は、俺と一晩を共にしたいらしい。


(家の整理しようかと思ったけど……まぁいいか)


雪光さんに捨て駒にされた俺を慰めて、なんて。そんな女々しいことは思っていない。

だけど、少しだけ乱れた頭の調子を戻すには、一瞬の現実逃避が必要だ。

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