おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
翌朝。
不思議な目覚めを体験した。
「おはようございます、咲人さん」
「……」
少女が控えめに、俺の肩を叩いている。これはもう〝不思議〟というよりも〝不可解な目覚め〟と言った方が正しい。なぜなら――
(俺より先に起きた?少女が動く気配に、俺は気づけなかったのか?)
刺客やら襲撃やらで、常に神経をとがらせている。寝ている時だってそうだ。だから自分以外の気配には敏感なハズ……なのに。
起きることはおろか。
学校へいくための身支度までも許してしまった。
どれほど深く寝ていたのか。
もし相手が敵なら、即「あの世」行きだ。
(いや〝少女だったから〟深く眠ったのか……?)
まさに不可解な出来事に頭を悩ませていると、少女が遠慮気味に口を開く。
「私、もう学校に行きますね。鍵をどうしたらいいかと気になって……すみません、起こしちゃいました」
「いや……あ、ちょっと待って」
急いで部下にメールを送る。内容は【少女に気付かれないよう護衛をしてほしい】。すると「五分あれば行けます」と返事がきた。
……五分、引き留めておくか。