おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「本当……変わった奴」


とある場所へ電話をかけながら、冷蔵庫を開く。見事に空っぽ。


「コレを見ても文句を言わないんだもんな……。いや、あの子なら遠慮して、冷蔵庫を開けることさえないか」


――プルル、プッ。


「頼まれごとしてくれ。食料を買って来てほしい。俺は例のショップにいるから、買い終わったら持って来て」


そして夕方。


「ただいまでーす!」


少女は、自分の家のように帰って来た。

仕事を持ち帰っていた俺がキーボードを打つ音を頼りに、少女は脇目も振らずリビングへ来る。


「咲人さん、ただいまです!」


「ん」と短く答えるも、手を止めない俺を一瞥し、少女は「鞄おいてきますね」と寝室へ行く。俺の仕事を邪魔すまいと、気を遣ったらしい。


「……へぇ。そういう事が出来る子なのか」


少し感心した、次の瞬間。


「あー!さ、咲人さん!なんですか、これ!」

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