おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

少女が鞄を置きに行った寝室。そのクローゼットを、わざと開けておいた。

すると案の定。

大きすぎる声で反応がきた。「触っていいよ」というと、少女は大事そうに抱え、スゴイ勢いでやって来る。


「これ、これこれ!白いワンピース!」

「うん。君の」

「な、ななな、なんでですか⁉」

「なんでって、制服だけで過ごすつもり?」


眉を顰めていうと「私はむしろ潔癖な方ですよ⁉」と少女。俺に嫌われまいとするためか、あらゆる面のフォローに余念がない。


「良かったら着て。良くなくても、もちろん」

「き、着ます!着ます着ます!うわ、しかも有名なショップじゃないですか!」


顔を真っ赤にして、鼻息荒く喋り続ける。正直、うるさい。

だけど「うぎゃ」と。カエルが潰れた声を最後に、パタリと静かになった。見ると、タグを見て固まっている。

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