おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「こ、こんな数字、見たことありません……」
(値札タグは切って渡すのが作法だろうに)
確かあそこは、ビトラ組配下のショップだったな。後で店長に話をつけるか――ふいに仕事モードになった俺を見た少女は、静かに口を結んだ。どうやら空気を読んだらしい。
(高校生にしては、よく周りを見てるな。勘がいいというか)
ふーん、と。あてもなく指を動かせば、Mのキーをタッチしてしまう。М、エム……そうだ。
「ミミ、着替えておいで」
「ミミ?あ、私はまほろって言いま、」
「今日から君はミミだよ。だって、俺のネコになったんでしょ?」
「!」
GPSや盗聴器は、余念なく破壊している。
だが、それでも。
もし取りこぼしがあれば、少女の居場所はおろか名前まで知れ、素性が暴かれる。
紫吹に名前が割れてみろ。家族は人質に取られるし、住む場所だって奪われる。一家離散はよく聞く話だ。紫吹が通った後は、何も残らない。
(だから本名は隠し通す。少女と、コードМのためにも)