おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「ブハッ!」
飛鷹さんが吹き出すと同時に、紫吹は「やれやれ」と。眉間にシワを寄せる。
「俺がツバつけた物を横取りとは。不躾なビトラめ。その子は、もう俺のだろう」
「な、違……んむ!」
反論しようと口を開ければ、咲人さんの大きな手に塞がれる。次に頭ごと後ろに倒され、咲人さんの胸に支えられた。
その時――ドクンドクンと。
規則正しい音が、耳に反響する。
(あ……)
咲人さんの心臓が鳴っている。愛する人が生きている証を、いま確かに聞いている。
(咲人さん、生きてる……っ)
飛鷹さんの話を聞いた時、「まさか」とか「もう」とか。嫌な予感が、一瞬だけチラついた。
だけど、生きていた。
それだけで、もう充分。
最高潮の幸せ。
と思っていたのに――
「ツバをつけたら自分のものか?冗談はよせ。
現に今、この子は俺の腕の中にいる」
ギリッと。私の肩を抱く咲人さんの手に力が入る。
「ミミは、俺のだ」