おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「この人たちは悪くありません!」

「恐怖のあまり錯乱しているな。人質を刺激しないよう、慎重に確保するんだ」

「本心なのにー!」


何度「違う」と言っても、警官たちは聞く耳を持ってくれない。

私を保護……というか咲人さんを確保するため、ジリジリ間合いを詰めている。まさに一触即発。


「大鳳さんって、サツに顔が割れてんの?」

「……それなりに」

「ダメじゃん」


飛鷹さんは南下していたおかげか、どうやらノーマークらしい。警官の口から出るのは、咲人さんの名前ばかり。

そして指揮官だろう人が、全警官を従える鶴の一声を発する。


「大鳳咲人を捕まえるためなら、多少の発砲は許される。死なない程度に弱らせろ。そして確実に捕らえるんだ」

(……なにそれ、なにそれ!)


命さえあれば他はどうでもいい、と言わんばかり。咲人さんを侮辱しているのは明白で、聞くだけで嫌な気分。

「訂正してください」――言う前に、指揮官が片腕を上げる。次に行動開始の合図を出す、

その直前のことだった。


「咲人を撃つのは賢明じゃないよ」


殺伐した現場に、新たな声が加わる。

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