おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「お前は!」と、眉間にシワを作る指揮官――見た目二十代前半で若い人だ。その目は、一点に釘付けになっている。
声の主は、小高い場所から私たちを見下ろしていた。白いスーツ、一つに結われた銀色の髪。さっきまでココにいた紫吹と同じくらい、否応なく畏怖の念を抱かせる存在――
「ミミちゃん、よく咲人を思いとどまらせてくれたね。Goodgirl」
「ゆ、雪光さん……!」
雪光さんが来てくれて、どこかホッとしている。警察からすると、ビトラ組のボスが来たからてんやわんやかもしれないけど。
「……ボス」
(あ、そうか。咲人さんも……)
私は咲人さんを守れて良かったけど、咲人さんからしたら〝雪光さんからの大事な命令〟に背いたことになる。その罪悪感からか、見上げる顔色は少し青い。
(飛鷹さん、何かフォローを!)
だけど不思議なことに、この場に彼の姿がない。
慌てて見回すと、いつの間にか雪光さんの後ろに控えていた。きっと雪光さんが登場した時を狙ったんだ。警官も「アイツいつの間に!」と、飛鷹さんを見て慌てている。